会社のバイアウト時に注意すべきこと

スタートアップがバイアウト(買収)されるとは?法的な位置付けは?

 株式の全部または一部を売却することで株主構成に買収先企業が参画することになるという①子会社化というケースと、株式を売却するだけでなく会社ごと吸収してしまいバイアウトした側の②会社が消滅してしまうというケースが多いと思います。(その他事業譲渡や会社分割というスキームもあります。)
 ①前者(子会社化)は、投資契約や株主間契約等において、譲渡する株式の価格をどのように算定していくらにするかという交渉が中心になりますが、②後者(吸収合併)は、譲渡する株式の価格の問題に加えて、買収先企業にがバイアウトした側の会社を完全に自社に取り込んでしまうので、事業だけでなく従業員をどう取り扱うのか等といった観点からの検討も必要になってきます。
 ただ、どのようなスキームにするかは、基本的には買収先企業の意向に左右されやすいと思います。

バイアウトのあとは、従業員や役員はどうなるのでしょうか?

 子会社として存続する場合であれば、買収した企業から取締役など役員が派遣されることや従業員が出向するはありますが、バイアウト企業の従業員の雇用契約には基本的に影響はありません
 他方で吸収合併になると、原則として労働契約も承継することになるため、自動的に買収先企業の従業員になります。雇用条件は継続するのか買収先企業の人事規定に従うのか交渉事項になるため、ここで従業員との信頼関係がなければ経営陣が不審に思われる可能性もあるので注意が必要です。
 役員は、雇用契約ではないため、様々な選択肢がありますが、どのような設計をするかは契約交渉次第ということになります。一般的には、買収先企業の就業規則に基づいた従業員になるケースが多いとは思いますが、買収に伴い辞めてしまう人もいますし、買収先企業の役員に選任されることもあります。

バイアウト時に創業チームが持っていた株式はどうなるのか?

 バイアウト(買収)とは、株式の買収であるため、通常、創業チームが持っている株式は買収先企業に譲渡することになります。全部を譲渡してしまい完全子会社になることもありますが、一部を創業チームに残すこともあるようです。この比率に関しては交渉事項ですが、買収先企業がどの程度支配力を持ちたいかという意向が優先される傾向にあります。
 投資契約の中で、バイアウト企業の株主に対して競業避止義務や退職勧奨禁止に関する条項が付されていることがあります。ここでは詳しく説明しませんが、簡単に辞められては買収先企業にとっては買収した意味がなくなってしまいます。どのような内容や範囲において義務や禁止が設けられているのかという観点から注意が必要です。

バイアウト後に創業メンバーは新しい事業をすぐに展開することもできるのか?

 売り込むモノが何であるのかによるとは思いますが、通常のケースだと、売上や利益を伸ばす目的で買収をするので、売上があるサービスの磨き込みや拡張が要求されることになります。
 やや語弊はあるかもしれませんが、人脈や能力等を指す意味でのヒトを買収したということも考えられるので、そのようなケースだと買収先企業と一緒に新規事業を検討することにもなると思います。買収先企業に新しい風を入れることで、積極的に新たな化学反応をもたらすことが求められるでしょう。

バイアウト先を決める上で、起業家はどんなことを検討・準備しておくべきだと思いますか?

 当然の前提として、売上への貢献、アイデアやプロダクトの磨き込みが優先して重視されることは間違いないのですが、それ以外にも事前に準備が可能なことはあります。資本金や売上規模に加えて、バイアウト時のミーティングにおけるプレゼン能力や、自社プロダクトを保護するための特許取得などは売却価格の評価に直結します。
 さらに、経営能力や特許なども重要ですが、バイアウト企業が買収先企業の社内ルール等に円滑に順応できるかどうかも考慮要素になることが多いです。すなわち、取引先との契約書の管理状況や就業規則等の社内規程などが整っていると、きちんとしている会社だという印象を与えることができます。
 このような部分の整備は、数字には見えにくい部分ではあるため、印象論だけかと思われがちですが、買収先企業が上場企業など管理部門がしっかりしている会社であれば、管理系DD(法務や人事労務、財務等に関するデューデリジェンス)の評価に大きく影響します。そのような場合、管理部門のコストを考慮してもなお、買収する価値があるかどうかという意見や評価報告がなされることになります。
 そのため、管理部門の業務についても決して疎かにはできないと考えておいたほうが良いと思います。

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