[2018/12/05]ベンチャーファイナンス 投資契約の特殊な条項その1「ドラッグ・アロング」

ベンチャー企業やスタートアップ企業であれば、成長を加速させる等の目的でVCやエンジェル投資家から出資を受けるケースもあると思います。VCやエンジェル投資家から投資をしてもらうためには、どのような投資契約を締結するのがいいでしょうか。

 

「投資しやすい投資契約」とは、一体どういうものでしょうか。今回の記事では投資家が安心して出資できるような、投資契約の特殊な条項について、みていきましょう。

 

1.なぜ投資契約を結ぶのか?

 

そもそも、なぜ投資契約を結ぶのでしょうか。ベンチャー企業やスタートアップ企業の創業期における投資では、株式を発行して登記するということを行うだけで、投資契約は締結しないケースも多いと思います。

 

創業期の少額の投資というのは、受けたらそれで終わりではなく、次にVCなどの投資家からより大きな資金を調達し、その後、上場やM&A等を目指していくことになります。しかし、ベンチャーというのは、非常にリスクがあるため、当初の予定通りに全てが上手くいくとは限りません。

 

「もし上手くいかなかった時にどうするのか」について、起業家と投資家との間で事前に明確に合意しておいた方が、のちのちトラブルになりにくいと考えられます。これが、投資契約の最大の目的の一つです。

 

2.ドラッグ・アロングとは?

 

ドラッグ・アロングとは、一定の要件を満たす場合、投資家が主導して、経営陣や他の株主に対して、M&Aに応じて株式売却を強制できる権利です。「強制売却権」、「売却請求権」、「売渡請求権」などと呼ばれる場合もあります。

 

では、投資家の立場から考えた場合、ドラッグ・アロングの条項が必要とされる状況には、どういったケースが考えられるでしょうか。大きく分けて、以下の2つのケースが考えられます。

 

A.会社が順調に発展している場合

経営者側としては、会社はもっと大きくなるはずなので、将来のIPOやもっと大型のM&Aを狙いたいと考えているが、投資側としては、よいM&Aのオファーがあったのでこれを受けたいとき。

B.会社が上手くいっていない場合

経営者側としては、会社を手放したくなく、M&Aにも応じたくないと考えているが、投資側としては、投資の都合上、株式を売却せざるを得ず、損切り覚悟でもM&Aを受けたいとき。

 

投資家の考えは、必ずしも経営者や他の株主の考えと一致するとは限りません。上記のケースはどちらも、投資側の考えと経営者側の考えが異なった場合である、ということができます。

 

3.ドラッグ・アロング権が発動される条件をどうするか

 

一方、経営者の立場から考えた場合、投資家のドラッグ・アロング権がいつ発動されるか分からない、会社がいつ売られるかわからないという状況では、安心して会社経営をすることができません。そのため、「どいういう条件が満たされれば、ドラッグ・アロング権が発動されるのか」を決め、これを契約に盛り込むことが必要になってきます。

 

例えば、以下のような条件を付けることが考えられます。

 

・〇年経っても上場していなかったら

・〇〇億円以上の買収のオファーがあったら

・設定された目標(売上など)を達成しなかったら

 

これらの条件については、会社のビジネスモデルや将来のシナリオに深く関係してきますので、経営陣や投資家などの契約の当事者間でじっくり話し合って決めることが重要になってくるでしょう。

 

4.投資家側のメリット・デメリット

 

ドラッグ・アロングの内容を盛り込んだ投資契約を締結する際の、投資家側のメリット・デメリットについて、それぞれ見ていきましょう。

 

投資家にとってのメリットは、何といっても、経営者側や少数株主の意見に関わらず、M&Aにより、株式の売却が可能となることです。そもそも、ドラッグ・アロングの条項は、投資家側が主導してM&Aを強制的に行えるという条項であり、この点が最大のメリットになります。また、投資側としては、株式売却ができるという安心感がありますので、投資がしやすくなるというのもメリットになるでしょう。

 

デメリットとしては、ドラッグ・アロングの条項を発動できる条件を契約に盛り込んだ場合、その条件に合致しなければ、ドラッグ・アロング権を発動できない場合も考えられるということです。

 

5.経営者(企業)側のメリット・デメリット

 

次に、経営側のメリットは何でしょうか。ドラッグ・アロングの条項を追加することにより、VCやエンジェル投資家などからの出資を受けやすくなるということがあるでしょう。また、買収されやすい、というメリットも考えられます。

 

一方、IPOを目指すベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、本当はIPOをしたかったのに、投資家の都合でドラッグ・アロングの条項を発動されてしまい、経営側としては不本意なM&Aでも、株式売却せざるを得ない状況になってしまうことも考えられます。

 

以上より、ドラッグ・アロングの条項を検討する際は、「どういう条件が満たされれば、ドラッグ・アロング権が発動されるのか」に関し、投資家とよく話し合って決めることが重要になってくるでしょう。

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