[2018/12/06]ベンチャーファイナンス 投資契約の特殊な条項その2「タグ・アロング」

ベンチャー企業やスタートアップ企業であれば、成長を加速させる等の目的でVCやエンジェル投資家から出資を受けるケースもあると思います。VCやエンジェル投資家から投資をしてもらうためには、どのような投資契約を締結するのがいいでしょうか。

 

前回の記事では、「ドラッグ・アロング」についてみてきました。今回も、引き続き、投資家が安心して出資できるような投資契約の「特殊な条項タグ・アロング」について、みていきましょう。

 

1.投資契約とは?

 

前回から、投資契約の「特殊な条項」について検討していますが、それでは、そもそも、「一般的な」投資契約とは、どういったものでしょうか。

 

以下では、スタートアップ企業の創業期における簡単な投資契約書のひな形をベースにして、投資契約書の条項の項目を抜き出しています。

 

1.投資目的

2.募集株式の発行及び取得

3.資金使途

4.表明及び保証

5.払込義務

6.払込後の発行会社及び経営株主の義務

7.事前協議事項

8.秘密保持義務

9.その他雑則

 

以下で解説する「タグ・アロング」の内容は、上記の一般的な投資契約に追加することが可能である「特殊な条項」になります。

 

2.タグ・アロングとは?

 

タグ・アロングとは、株式売却における条項の一つです。特定の株主が株式を売却する際、他の株主も同様の条件で買手に売却する権利を持つことをいいます。「共同売却権」、「売却参加権」などとも呼ばれています。

 

例えば、突然、大株主が自己の株式を全て売却した場合、当然、企業価値や企業経営に大きな影響を与えることになります。このような影響は必ずしも、いい影響だけとは限りません。そこで、特定の株主が株式を売却する際、その他の株主も同様の条件で売却する権利を持つことをあらかじめ合意しておけば、その他の株主としては、安心して投資することが可能になります。

 

3.タグ・アロングの2つのケース

 

以上のように、タグ・アロングは、一般的に、少数株主の保護のための条項と言われていますが、対象となるのは少数株主だけではありません。投資家の立場から考えた場合、タグ・アロングが適合する状況には、どういったケースが考えられるでしょうか。以下では、2つのケースについて、みていきましょう。

 

A.経営株主が株式を売却する場合に投資家も一緒に株式を売却できるケース

「他の株主のことは顧みず、経営者株主だけ売り抜ける」という事態を避けるため、投資家にも、経営者と一緒に売却する権利をつける場合をいいます。この場合の投資家は、大株主の場合もありますし、少数株主の場合も考えられるでしょう。

B.大株主である投資家が売却をする場合に少数株主である投資家も一緒に株式を売却できるケース

こちらの場合は、少数株主保護という観点が強くなります。大株主である投資家が株式を売却する際には、他の投資家も大株主と一緒に株式を売却をする権利をつける場合をいいます。

 

上記のケースはどちらも、投資家の保護を考えたケースであり、「タグ・アロング」は投資家のための条項である、ということができます。

 

4.投資家側のメリット・デメリット

 

タグ・アロングの内容を盛り込んだ投資契約を締結する際の、投資家側のメリット・デメリットについて、それぞれ見ていきましょう。

 

投資家にとってのメリットは、何といっても、経営株主や大株主が株式の売却をする際、その売却に便乗して、一緒に株式の売却が可能となることです。これにより、経営株主や大株主は株式を売り抜けたのに、自分だけ株式売却することができなかった、という状況がなくなります。経営株主や大株主と同じタイミングで、株式売却ができるという安心感がありますので、投資がしやすくなるというのがメリットになるでしょう。

 

一方、タグ・アロングは、経営株主が投資を引き上げるという状況を想定しているため、投資が上手くいかなかった場合のための条項であると言えます。投資家のリスクヘッジのための条項であり、便乗して株式売却をすることで、投資家の被害を最小限に抑えるという意味が大きいでしょう。このように、決して「前向き」な条項とは言えないことが、デメリットと言えるかもしれません。

 

5.経営者(企業)側のメリット・デメリット

 

次に、経営側のメリットは何でしょうか。ドラッグ・アロングと同様、タグ・アロングの条項を追加することにより、VCやエンジェル投資家などからの出資を受けやすくなるということがあるでしょう。

 

デメリットとしては、経営株主や大株主が株式売却をした場合、その他の投資家も株式売却ができてしまうため、企業側としては、株主が一気に入れ替わってしまう場合も考えられ、経営が不安定になることが考えられます。

 

以上より、タグ・アロングの条項を検討する際は、投資家とよく話し合って決めることが重要になってくるでしょう。

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